善日麿詩篇 第四部 龍口法難


 文永8年(1271年)9月12日、鎌倉松葉谷の草庵にて日蓮聖人は謀反人の咎(とが)により捉えられ、表向きは佐渡流罪となりました。しかし、向かった先は刑場の龍ノ口(龍口寺/神奈川県藤沢市)でした。

 その途中、桟敷の尼が馬上の日蓮聖人に「胡麻入りのぼた餅」を捧げ、それを食した日蓮聖人は奇跡的に処刑を免れたことから「御首継ぎに胡麻の餅」と言われる様になったとされています。

 鎌倉を引き回しされ、翌9月13日(午前1時頃から2時頃)、日蓮聖人は敷皮石(座布団状の石に皮を敷く)に坐らされ斬首を待つだけでした。いよいよ処刑執行しようと役人が太刀を大きく振りかざしたその時、江ノ島(神奈川県藤沢市)の方角から「満月の様な光もの」が飛来し、太刀は三つに折れてしまいました。後の日蓮聖人の手紙にも「満月の様な光もの」と記載されていた様です。 「光もの」につては諸説ある様ですが「稲光」や「隕石」ではなかったかとも言われています。奇跡ともいえる現象により処刑停止となり、辛くも一命を取り留めた日蓮聖人は、最終的には佐渡流罪となりました。


 本作品は「処刑中止」までのストーリーを元に構成されておりますが、タイトルの「龍口法難」は、正しくは「佐渡流刑」も含まれようです。しかし「佐渡流刑」をもう一つの法難、「佐渡法難」と唱える方もいらっしゃる様です。


 本作品は、2014年10月に創作され、初演は2015年10月18日、一乗寺(長野県安曇野市)本堂において、松本ウインズコンソートの皆さんによって行われました。

 写真は、初演当日のコンサートプログラムの表紙です。